Top

ご挨拶

奈良県立医科大学整形外科学教室
教授 田中 康仁

一般社団法人日本舞台医学会が2023年10月10日に設立されました。その初代理事長を拝命し、誠に光栄に存じておりますとともに、その重責に身が引き締まる思いでおります。本学会は東京健康リハビリテーション総合研究所の武藤芳照先生の発案で、札幌医科大学の山下敏彦先生、東京医科大学の山本謙吾先生と私が共同代表世話人を務め、2014年に第1回舞台医学(Stage Medicine)研究会として札幌で開催されました。発足10年を迎えるにあたりこの研究会を一般社団法人化しようという機運が持ち上がり、この度日本舞台医学会が設立されることになりました。
舞台芸術家をサポートしたいという思いで設立された学会であり、歌う、奏でる、踊る、演じる芸術家は、スポーツにおけるアスリートがおかれている状況と酷似しております。彼らはほぼ毎日、練習または演技をし、激しい競争にさらされています。また、痛みがあってもパフォーマンスをしなければならず、オーバーユースなど怪我のリスクがあります。しかし現状では舞台芸術家に対するまとまった医学的サポート体制はほとんどなく、我が国におけるスポーツ医学の黎明期とよく似た状況におかれているといえます。舞台上で活躍される舞台芸術家が心置きなく演技や演奏ができるように、日本舞台医学会は舞台芸術家の心身の健康上の問題に真摯に向き合い、何かあった時には適切に治療が受けられるように制度を構築してまいります。また、治療だけではなく障害予防を含めた総合的なサポート体制を作ることができるように活動していく所存でございます。手始めとして本学会が主導で2021年からは新国立劇場バレエ団のメディカルサポートを開始し、活動が徐々に広がってきております。医療や予防を提供する側としては、医師や歯科医師だけではなく、看護師、理学療法士、アスレティックトレーナーやそのほかの医療従事者の方々に会員や準会員になっていただき、是非一緒に舞台医学の発展に貢献していただけましたら幸甚に存じます。さらにはサポートを受ける舞台芸術家の皆様にも会員や準会員になっていただき、現場のニーズを日本舞台医学会に届けていただけるようになればと考えております。まだまだ取り組みは始まったばかりですが、皆様方の強力なお力で本会を盛り上げていただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。